本・漫画レビュー

砂の女

安部公房の代表作

安部公房『砂の女』を読みました。私の安部公房作品との出会いは高校の教科書に載っていた「空飛ぶ男」の衝撃に始まります。しかし、読書に慣れしたんでいない当時の私は安部公房の本を手に取ることはありませんでした。

ところが最近、書店で『箱男』という好奇心をそそるタイトルの小説を見つけ、さらにその作者が「空飛ぶ男」の作者であるという事も知ったため、再び安部公房に興味を持ちました。

今回読んだのは安部公房の代表作である『砂の女』です。

休暇を利用して新種の昆虫を採集しようと意気込む主人公は 監禁されることになる

〔あらすじ〕休暇を利用して新種の昆虫を採集しようと意気込む主人公は砂地に行った。田舎なので泊まるところがないということで、近くの集落の家に泊まることにするが、ある陰謀のために主人公はその家に閉じ込められることになる。

私達が日常の中で享受している「自由」なんて反復の退屈を紛らわすための「慰み」に過ぎないのかもしれない

この本の文章は読んでいて、じめっとした湿気や砂のざらざらした触感が疑似体験できるほど伝わってきます。素晴らしいのは文章表現にとどまりません。物語の構成も素人目で見ても見事です。

例えばニワハンミョウの手口の説明がなされた上で主人公が集落に罠にかけられるという構図、一風変わった伏線を敷くことに成功しています。また、「閉じ込められた家」と「日常」を重ね合わせて主人公が「自由」について物思いにふけるのもおもしろいです。
読んでいる私も自分自身の「日常」が主人公と重なるのではないかと考えさせられてしまいました。

私達は「自由」だと思いながら「日常」という名の牢屋に閉じ込められているのかもしれません。私達が日常の中で享受している「自由」なんて反復の退屈を紛らわすための「慰み」に過ぎないのかもしれないです。…こんな風に考えさせられる魔力がこの本にはありました。

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