
アメリカの文化人類学者からみた日本人観
ルース・ベネディクト『菊と刀』を読みました。1946年に刊行され、今なお読み続けられている誰もが知るロングセラーですね。
固定観念を持たずに研究に取り組む文化相対主義の立場から日本人論を展開した本だが、内容についてはところどころに疑問点があります。例えば訳者が注釈やあとがきで指摘しているとおり、間違いや勘違いが多いことや、恩・報恩を「借金の返済」に例えた説明は適切なのか、等のことがあげられます。しかし、これらの欠点があっても、本書が60年以上ロングセラーを続けていることが評価されていることの証明になっていると思います。
恩、恥、幼年/壮年期の二元論など、議論に値するテーマが豊富
本書の内容は、今なお、議論に値するテーマを多く取り扱っています。「恩」の概念や「恥」の概念はもちろんのこと、幼少期と壮年期の二元性、日本人の娯楽、どれをとっても現代の日本でも重要なテーマとなる題材ばかりです。
ベネディクトは大抵の日本人よりも深く日本人のことを考えていたのだと思います。戦時中であったためにベネディクトは日本を訪れたことはなかったそうです。これほど質の高い分析が、実地である日本を見ることなく行われていたということに驚かされます。
学問は私が思っている以上に、机上のみでも質の高いレベルまで到達可能なのかもしれません。
走り読みでも良いので一読をすべき
こんな学術書、いまさら読まねーよ…という方も、本書は「日本人」について考える議題にあふれた本なので、走り読みでも良いので一読をオススメします。